にんぎょのわらいごえ [でたらめ、でまかせ]
そのにんぎょは、人里にとおくはなれた孤島にひとりきりで住んでおります。
にんぎょは、人とはちがって、永遠のいのちがありましたから
にんげんの感じる退屈とは随分かけはなれた退屈を、
多分、真実の退屈というやつを体験しておりました。
そんな、退屈な毎日でしたので、いつのまにか、そのにんぎょは
たくさん空想をするようになっていました。
たとえば、嵐の晩に、人間が流れ着いて、おもしろおかしい話をしてくれるとか
じぶんの尾ひれに心が芽生えてしゃべりだすとか
やしの木から落っこちてきた木の実に かわいいこどもが入っているとか
にんぎょは 気が付いておりませんでしたが
それは、そうです。
それは、どれも、あなたが、気づいたようなことなんです。
来る日も、来る日も、繰り返す空想は
まるで、いのりのようでもありました。
そして、かみさまのようなものは、そのいのりを
聞き届けてくれたのかもしれません。
ある日、にんぎょのもとに、へんなものが訪れるのです。
ふにょふにょ [でたらめ、でまかせ]
フローライトさんは、どこまでも憂鬱でした。
というのも、フローライトさんの右手首のところから
なにか、おかしなものが生えてきたからなんです。
グリーンで、透明で、ゼリー状の細い糸のようなものが
フローライトさんの手首から生えています。
引っ張っても抜けませんし
ハサミでも切れません。
それと格闘しているうちに、フローライトさんは具合がわるくなって
お医者さんにいってみましたが、
体のどこも、わるいところはみつからず、
フローライトさんの 吐き気や、肩こりや、頭痛や、ぼうっとしたかんじは
晴れることはありませんでした。
それどころか、
皮膚科のお医者さんには、水虫の一種ではないかと疑われたり、
内科のお医者さんには、めずらしがられたり、
外科のお医者さんには、サンプルをねだられて、しぶしぶ承諾したものの
ハサミ３丁、ナイフ３丁をダメにして、ヒステリーをおこしたお医者さんと看護士に八つ当たりがてら叱られて、
かなり疲れ果ててしまいました。
別に、そんなに、気にしなければ、いいもの
のような気がしないでもないのですが
とにかく、これが、憂鬱でたまりません。
いつか、どこかで、だれかが、どんなものにも意味があるって
いっていて、なるほどなあなどと、考えていた自分を思い出して
これに 意味があるのかしらとか
おもえば、おもうほど、なんだか、とても、おもったるい苦しいきもちになってくるのでした。
ぴーまん [でたらめ、でまかせ]
ノウトさんの前に
おっきなピーマンが ふたつあります。
ノウトさんは ピーマンが 大嫌いですが
カボスさんは、この ピーマンを愛していて
丹精こめて 育てて
ノウトさんに プレゼントしてくれました。
なので、
ノウトさんは、この ピーマンを
たべなければいけません。
ノウトさんは、食べることを 想像しただけで
涙が出てきました。
食べないでも済む方法を
いろいろと、考えてみました。
そして、忘れないように メモに書いてみました。
そして、ひとつひとつ、読み上げたりしてみたのですが、
どれもこれも、
なんだか、しらじらしいのです。
カボスさんは、わかってくれるのでしょうか。
ただ、傷つけてしまうのではないでしょうか。
でも、でも、
ノウトさんは、ピーマンが のみこめません。
どうしても、のみこめないのです。
・・・。
カボスさんに、あてどなく、手紙をつづってみました。
そして、
もらったピーマンを 水彩でスケッチしてみました。
ピーマンの絵を描いた絵手紙を 描いてみました。
写真を 撮ってみました。
ピーマンの歌を 作曲してみました。
竹串にさして おだんごのように してみました。
どれだけ、時間をついやしても、
カボスさんのつくったピーマンは、しなびたり、くたびれることなく
いつまでも みずみずしいままです。
なんだか、魔法がかかっているようです。
つまんない。 [つくりばなし、いろいろ]
「つまんない」
と、
いった そのひとは、ほんとうに つまんなそうで
ちょっと、怒ってました。
でも、
だれかさんは
「つまんない」っていって、満足そうに わらってました。
だれかさんは、
つまんない フリをしていました。
それらを きかされた だれかさんは
それまでは、楽しかったのに
すっかり つまんなくなってしまいました。
みんな、喉が からからに かわいていたので
何か飲みたかったんですが、
コーヒーが 飲みたかったり、ビールが 飲みたかったり、
ジュースが 飲みたかったり
みんな、てんでバラバラのものが 欲しかったので
あさっての 方角へ それらを 探しにいって
二度と、同じ人に 出会うことはありませんでした
ところで
ぼくは、おやつが 食べたいです
みたらしだんごに しようかなあ
